なぜ、この時代に雑誌なのか

私にとっての雑誌

私にとっての雑誌とは、”人生のバイブル”だ。忘れもしない高校一年生の夏、本屋で一冊の雑誌を手にしたときからずっと。あれは、POPEYE、”部屋とシティーボーイ”(2020年三月号)奇跡的に残っていたバックナンバーだった。コロナ禍で学校もオンライン、部活も停止になったため、私が雑誌の世界に引き込まれるのはもはや不可避だった。雑誌の表紙にまず魅了され、ブランドの広告、特集、コラム、小連載まで、嘗め回すように読んだ。紙面の中のすべてが、光って見え、紹介されたお店を粛々とGoogle Mapの”行ってみたい”リストに追加していくのが毎月の習慣になった。POPEYEから入った私だが、以降マガジンハウス発刊の雑誌を中心に読み漁りBRUTUS,CASA、&Premium,(たまにGINZA)他社では、Lightning,など、”好きなものは何?”という質問に対しては、自信をもって”雑誌”と答えるようになっていた。もちろん、最初は自分の周りで雑誌を好んで読むような友人は少なかったし、周りよりも一歩大人であるような優越感に浸っていた節はある。しかし、誰に強制された訳でも、進められた訳でもなくここまで自分自身を熱くさせてくれるものに出会ったことに、何よりも感動していた。

読者から作り手

一読者に過ぎなかった自分が、将来の仕事として”雑誌の編集者”を意識し始めたのは、高2か高3の頃だった気がする。漠然とやっていた受験勉強に意味を見出せず、将来の仕事に繋がる、と思えば頑張れるように思えた。当初は、憧れの出版社に入ること、大好きな雑誌の編集に携わることが第一の夢だった。大学に入り、フリーペーパー団体が存在することや、個人で自作の雑誌を作っている人が存在することも知った。すると、自分自身で”雑誌”を作り上げたいと強く感じるようになった。以降、紆余曲折あり、Web Magazine WANDRを立ち上げることになり、現在こうして文章を書いている。今現在、雑誌と呼ぶには恥ずかしいくらいの出来栄えだが、周りの友人、新しく知ってくれたフォロワーの方からたくさんの嬉しい意見を受け取ることができた。この雑誌をどのくらいの大きさに育てていきたいかとか、最終的な目標は、とかそんなことは正直分からない。想像がつかない、と言った方が正しいかもしれない。多くのWeb Magazineは、何か一つのカルチャーに絞って発信することが多い。旅、音楽、映画、ファッションなど。そうしたほうが、エンゲージメントが高まるし、方向性も定めやすい。だが、私は欲張りなので、その決断はできなかった。そもそも、例えば音楽、というカルチャーを語る際に、他のカルチャーと切り離して語ることは不可能だ。もっと包括的に、自由に語り合う場を作りたいと思った。

なぜ雑誌なのか

”雑誌が好き”と人に伝えても、いまいちピンときていないような反応をされることが多い。もちろん、生まれてから雑誌を買ったことがない、という人や、活字を読むのが苦手という人が一定数存在することも分かっている。今の時代、Tik Tokや、インスタのリール、YouTube Shortsで無料で、もっと手軽に、素早く情報や快楽を得ることができる。わざわざ、1000円近いお金を出して持ち運びにくい紙の束を買うのか理解できない人も多いだろう。実際に、出版不況が叫ばれる世の中で、”雑誌編集者”を目指すことにネガティブなイメージを持つ人も多くいる。1990-2000年前半のカルチャー雑誌全盛期を経験していない、いわゆる”Z世代”は、特に関心が薄いのだと思う。そもそも、YouTubeやTik Tokと違い、静的な二次元空間で勝負する雑誌は、中身を見てもらわないとそもそも興味を持ってもらえない。このように、雑誌が直面している問題は山積みだ。ではなぜ、この時代に雑誌なのか。”人と人のつながりを再確認するため”だ。雑誌とは、”好きなもののシェア”だと思う。編集者やライターの思う、”良いもの”、”おすすめ”を読者が取り入れる。自分一人が見る世界では、知ることができなかったモノや、ヒトを雑誌を通して知ることができる。また、SNSとは違い、承認欲求に駆られたり、他社との比較で落ち込んだりすることもない。ワクワクするような特集に心を躍らせ、有名人のエッセイに耳を澄ませ、ブランドのルックに魅せられること。そこにはポジティブな世界が広がっている。一冊の隅から隅まで読むのではなくても、興味のあるページや、目を引く部分のみを読んでみるでもいい。”この前雑誌で紹介されていたお店に行ってみよう”、”この映画面白そう。今夜見てみよう”とか雑誌を通して自分の人生を”編集”してみると、すごく面白い。色々なエンタメに、”速さ”や”手軽さ”が求められる世の中に対するアンチテーゼを提言したいわけではない。WANDRを通して、雑誌が持つ本来の力を、少しでも知ってもらえたらなと思う。

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